Zoltan Fodor 氏はQCD、Higgs、QEDが体重に及ぼす割合を、自作の体重計を使って説明した
国際シンポジウム「クォークから宇宙まで」(QUCS2015)は5日間にわたり、毎日9時から18時までみっちり行われました。口頭発表はのべ88件、ポスター発表は13件あり、活発な議論がされました。
初日は、HPCI戦略プログラム分野5の統括責任者、研究開発課題責任者による5年間のプログラムの成果報告から始まりました。成果や進捗だけでなく、今後の方針なども示されました。その後は夕方まで、招待講演を含む口頭発表が行われました。会場の能楽ホールはとても日本的ですばらしく、外国人研究者にも気分よく発表をしていただきました。
発表後の質疑応答でも活発な議論が繰り広げられた
ポスターセッションでも活発な議論が行われた
2日目以降は個別の研究発表があり、午前中はメイン会場のみ、午後は複数の会場を使って多くの口頭発表が行われました。2日目の夜には飲食をしながらのポスターセッションもありました。休憩時間やランチタイムも、発表内容をもとにした議論があちこちでなされ、内容の濃いシンポジウムとなりました。
盛況のうちに幕を閉じたシンポジウム。最終日は午前中のみ、しかも日曜日とあって、午後は奈良を観光したり、おみやげを見て回ったり、観光シーズンの奈良を満喫しました。
シンポジウム会期中の11月7日(土)に、市民講演会「「計算」から見える素粒子・原子核・宇宙の世界」を開催。3人の講演者が「計算」の視点から、素粒子・原子核・宇宙について語りました。主催のHPCI戦略プログラム分野5からは、初田哲男・理化学研究所主任研究員、後援のポスト「京」重点課題9からは、吉田直紀・東京大学大学院教授、ゲストとして地元の橋本幸士・大阪大学大学院教授に、それぞれ40分間の講演をいただきました。
一人目の初田主任研究員は、素粒子や原子核の基本的なことがらを説明しつつ、戦略プログラムにおける最新の成果をちりばめながらのお話でした。二人目の吉田教授はシミュレーション結果を元にしたムービーを紹介するなどして、宇宙の神秘や広大さを感じさせてくれました。最後の橋本教授は理論家の立場から、理論vs計算を講演の軸に、超弦理論などの究極理論にどのような手段で迫っているかを面白く解説していただきました。ちなみに、理論と計算の勝負は「引き分け」とのことでした。
来場者アンケートによると、学生、50代、60代が中心。奈良だけでなくとなりの大阪からも多くお越しいただき、中には関東から足をのばしてくださった方もいらっしゃいました。3つの講演の内容や難易度についてはいずれも5段階の4.5付近という高評価で、講演会全体についてはアンケート回答者全員が最高評価をつけるという結果となりました。参加いただいたみなさま誠にありがとうございました。
]]>わかりやすい講義で、2時間超の長丁場でありながら、参加者はみな勉強になるだけでなく、大いに楽しむことができました。質疑応答も活発に行われました。
講師の武田さんは大阪出身ですが、大阪大学に来るのは初めてとのこと。地元でありつつも新鮮な気持ちで講義ができました。
JICFuSセミナー(JICFuS Seminor on Non-Perturbative Physics)は、京都、大阪、名古屋、神戸に在籍する格子QCDなど非摂動物理の研究者が中心となって、2013年度から始まったセミナーシリーズです。関連する分野の研究者であればどなたでも参加できます。セミナーでは様々なテーマを取り上げ、講演1時間+質問1時間とたっぷり時間を取って活発に議論していきます。
]]>シンポジウムでは、来賓の挨拶があった後、2つの基調講演があり、PRACE(欧州スパコン利用促進機関)のDr. Sergio Bernardi、シンガポール科学技術庁のProf. Alfred Huanが講演を行いました。
パネルディスカッションでは、まず各戦略分野の代表的な成果を3分間で紹介。続けて、世界に与えたインパクトとして、分野1は心臓シミュレーション、分野2はデバイスや電池のシミュレーション、分野3は地震動シミュレーション、分野4はものづくりへの近い将来への貢献を語りました。分野5は京都大学基礎物理学研究所の柴田大教授が、教科書が書き変わるような成果として、中性子星連星合体や格子量子色力学について話しました。
最後にポスト「京」への期待について、会場を交えての議論を行いました。分野5からは、これからの10年間に複数の大型観測装置が運用されるのにともなって、理論的裏付けを行っていく点での貢献が可能と話しました。会場からは、バッチ式の並列計算とビッグデータのリアルタイム処理との関係について質問がありました。
ポスターセッションの後、優秀成果賞受賞者による講演セッションがあり、分野5関係では2名が受賞講演を行いました。「超弦理論の数値シミュレーション」で筑波大学数理物質系の伊敷吾郎助教、「超新星残骸衝撃波における宇宙線加速機構の解明に向けた1兆個粒子シミュレーション」で千葉大学大学院理学研究科の松本洋介特任助教です。二人の研究の詳細については、ウエブマガジン「月刊JICFuS」をご覧ください。
「目指すは究極の理論-スパコンを使って超弦理論とゲージ理論の等価性を検証する」伊敷吾郎助教
「宇宙空間のプラズマ粒子の“なぜ?”に迫る」松本洋介特任助教
参加者は原子核理論・実験、天文理論および計算科学の広い分野に渡り、素粒子・原子核と星までの世界が密接に繋がっているのを実感する会議となりました。特に、原子核実験と天文シミュレーションの間など、話には聞いていたが、これまで面識のなかった研究者同士の新たな出会いを生み出す機会となりました。原子核理論・実験からは状態方程式や電子捕獲・ニュートリノ反応などの最新データや理論予測が報告されて、超新星における環境へ間近にせまる進展が期待されました。天文シミュレーション側からは、核物理が爆発メカニズムに及ぼす影響が非常に敏感なものであり、注意深く扱うべきことが認識されると共に、重要な鍵を握る原子核種は何かを特定することなどが報告されました。(ホームページでスライドが公開されています。)
研究会開催中、昼食時のブレークでは湧き水が流れる街中を散策することなどで参加者間が親しく打ち解けました。4日目の午前には議論セッションが行なわれて、状態方程式テーブルに関わる研究者が自由に討論しました。数値シミュレーションに用いるための状態方程式のライブラリ構築や天文現象への影響について、および、必要な物理量、領域拡張、データ形式、原子核理論の枠組みの違いなどについて、実質的な情報交換と討論が活発に行なわれて、最先端の研究者だけでなく、これから核物理・天文に取り組む研究者や大学院生にとっても貴重な機会となりました。研究発表、そして討論や情報交換が今後の核物理と天文シミュレーションの更なる密接な連携に役立つことが期待されます。
この研究会は、主に科研費基盤A「大質量星の進化における重力崩壊型超新星の総合的研究」(24244036)の財源により運営されました。また、HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」・科研費新学術領域(重力波天体 A05 24103006、中性子星核物質 24105001)の協力、科研費(基盤C 15K05093, 若手A 26707013)の補助、を受けて開催されました。
]]>本研究会では、理論と実験双方から12人の講演者を招き、相図の解明、状態方程式の精密計算、有限密度系の符号問題の克服などに向けた最近の進展、創成期から現代に至る格子QCDシミュレーションの歩みの紹介、さらに今後の展望が議論されました。
熱い講演と活発な質疑応答の様子は、近年の有限温度密度研究の目覚ましい進歩と、それに伴うコミュニティーの拡大を参加者に実感させるものでした。
会議では、量子色力学(QCD)相図の解明に向けた有限温度・密度系の研究が数多く報告されました。また、異常磁気能率など、これまで計算が難しいとされていた物理量を計算する手法が改良され、素粒子標準理論の検証が大きく進展すると期待されます。同時に、標準理論を超えた模型のシミュレーションも着実に進んでいることがわかりました。ほかに、バリオンの内部構造やバリオン間相互作用に関する成果が報告され、第一原理に基づいたハドロン・原子核物理学への応用にも進展がみられました。
次回のLattice2016は、7月に英サウサンプトンで開催される予定です。
計算基礎科学連携拠点は、Lattice2015の参加者全員に、量子色力学カードゲーム『Quark Card Dealer』のサンプルを配布しました。また、ポスターセッションに参加している研究者を対象にカードゲーム大会を開催しました。カードゲームのブースを準備している最中にも、外国人研究者から質問やサンプルカードの問い合わせが相次ぎました。20~30人の研究者が『Quark Card Dealer』にチャレンジし、半数近くがコンプリート(ゲーム・クリア)していきました。
受付で配られたカードを外国人研究者同士で交換している姿が見られたり、講演の中で「私のカードだ」とばかりにHダイバリオンを見せびらかす場面がみられるなど、好評でした。
関連リンク
今回は、JCFuSセミナーに基礎物理学研究所の素粒子・原子核合同セミナーを兼ねていたため、参加者は50名と大人数でのセミナーとなりました。素粒子理論の研究者だけでなく、原子核理論分野の研究者や大学院生の参加者も多く、活発な質疑応答が行われました。
講義は、研究手法の中心となるカノニカル法の基礎から始まり、最新の研究成果までを丁寧に説明する内容でした。最新の成果として、有限密度格子QCDにおいて長年の懸案であった符号問題の解決に向けた意欲的な試みについての話題がありましたが、まだまだ不明確な点が多く、参加者から多くの質問やコメントがありました。これからやるべき課題も多く、若い研究者の参加を望むという谷口氏のコメントをもってセミナーは終了しました。
JICFuSセミナー(JICFuS Seminor on Non-Perturbative Physics)は、京都、大阪、名古屋、神戸に在籍する格子QCDなど非摂動物理の研究者が中心となって、2013年度から始まったセミナーシリーズです。関連する分野の研究者であればどなたでも参加できます。セミナーでは様々なテーマを取り上げ、講演1時間+質問1時間とたっぷり時間を取って活発に議論していきます。
]]>量子多体系は素粒子、原子核、物性など広い範囲の物理系で現れる普遍的なテーマです。この分野では負符号問題など従来の方法では解析の難しい系があり、その解明に向けて新しい方法の開発が必要とされています。本研究会は、テンソルネットワークを中心に、物性・素核宇宙分野で共通する話題や新しい方法を、分野を越えて活発に議論する事を目的としました。
研究会では素粒子・原子核、物性を概観する発表の後、テンソルネットワーク、量子もつれ、AdS/CFTなど、近年分野を超えて興味を持たれているトピックスについて、講演者が最新の研究成果を発表しました。(講演スライドを掲載しました)
物性、素粒子、重力理論など様々な分野からの参加者が活発な議論を行いました。参加者からは「ものすごく勉強になりました」などのコメントが寄せられるなど、好評を博しました。今後の学際的な研究への発展が期待されます。
重イオン衝突を題材として時間依存平均場理論、様々な輸送過程のダイナミクス、分子動力学理論の外観についてのトークがあり、フラグメント生成、クラスター相関等を記述する様々な拡張方法について議論されました。とくに、AMD(antisymmetrized molecular dynamics)と呼ばれる、核子間のパウリ原理を完全に取り入れた分子動力学模型を用いた様々な適用例が示されました。
熱平衡の観点からクラスターやフラグメントの液相気相相転移から状態方程式への応用まで、幅広くかつ丁寧な解説が行われました。講義の途中にも多くの質問が出され、活発な議論もあり、今回も大いに盛り上がったレクチャーシリーズでした。
この素核宇宙融合レクチャーシリーズは、分野融合を目的の一つとする新学術領域研究「素核宇宙融合による計算科学に基づいた重層的物質構造の解明」およびHPCI戦略プログラム分野5の共催で行われました。最終的にはシリーズをまとめた「素核宇宙融合教科書」の制作が予定されています。
]]>研究会では、国内外を問わず関連する理論・実験双方の研究者が参加・講演し、将来の展望についても盛んに議論されました。
電子線を用いたハイパー核生成に焦点を当て、関連する理論・実験研究の最近の進展について報告がなされました。近い将来、米ジェファーソン研究所やドイツ・ヨハネス・グーテンベルク大学マインツでの高品質な電子線を用いることで、さらに高精度なハイパー核の生成・分光実験が可能になることが期待されます。
講演時やフリーディスカッションの時間にも数多くの議論が交わされました。インフォーマルな雰囲気の中、理論・実験双方の研究者同士が交流し、活発な議論を行うことができ、大変有益な研究会となりました。
]]>