2014年3月3日(月)~4日(火)に富士ソフトアキバプラザにて、HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」全体シンポジウムが開かれました。社会に向けて戦略分野5の研究成果を発信するシンポジウムで、毎年3月に行っています。今年の参加者は、65名でした。
今回は、全体的なことや研究開発課題の概要を説明するだけでなく、より個別の研究成果および体制構築における成果を中心に発表しました。また、5年間のうち残り2年間となったプロジェクトを振り返り、今後さらに発展させるにはどうしたら良いかなどについて議論を行いました。
シンポジウム初日は、研究開発課題の成果発表17件と基調講演が行われました。研究開発課題1では、理化学研究所の土井 琢身(どい・たくみ)専任研究員が、核子の3体力の計算を本格化させていよいよ「京」での計算に挑むと述べました。課題2では、東京大学の清水 則孝(しみず・のりたか)准教授から、ベリリウム同位体(Be8、Be10、Be12)におけるクラスター構造に関する講演がありました。昼休憩をはさみ、課題3では、京都大学の木内 建太(きうち・けんた)助教、関口 雄一郎(せきぐち・ゆういちろう)助教から、連星中性子星合体シミュレーションに関して進捗報告がありました。最後の課題4は、東京工業大学の小南 淳子(こみなみ・じゅんこ)研究員から、地球型惑星の水の起源と題し、惑星形成シミュレーションについて講演がありました。
基調講演は、東京大学情報基盤センターの石川 裕(いしかわ・ゆたか)教授。「エクサスケールコンピューティングに向けて」と題し、2020年の完成を目指して2014年4月から開発が開始される「京」後継機に関する準備状況と今後の計画について講演がありました。夜には交流会が行われ、引き続き議論などが行われました。
2日目の午前は、計算科学推進体制の構築から、ユーザー支援、QCDコード開発、ILDG/JLDG、広報に関する報告がありました。引き続き、それらを踏まえ、体制構築の今後の進め方に関する討論の時間を設けました。
まずスクールについて、これまでの成果はどうかという視点で議論を行いました。スクール参加学生が計算基礎科学の分野に参入しているかという点では、スクールで学んだことを博士論文で生かしている学生がおり、その意味では効果はあったと言えるとの意見がありました。また、直接の参入はなくても、裾野を広げて計算基礎科学の理解者を増やすことが必要という点では、参加者から好意的な感想が多いことから、ある程度達成できているとの発言がありました。
次に、ユーザー支援についてです。ユーザー支援とは、全国の計算科学の研究者から質問や相談を受け付け、それを解決またはアドバイスするという仕組みです。解決数が少ないのではないかという意見がある一方、ウエブに上がっている解決済みの事例報告を読んで役立てている例もあり、一定の成果は上がっているとの発言がありました。表に出ないところで個別に解決している例もあり、それを掘り起こして事例集として公開していったらどうかとの意見もありました。
午後は萌芽的研究課題から9件の報告がありました。また、ポスター発表が1件ありました。この全体シンポジウムは、2014年度も同じ3月頃に開催する予定です。
※全講演のプレゼン資料(PDF)をウエブに掲載しております。以下をご覧ください。
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