質量が太陽の8倍を超えるような大質量の恒星は、進化の最終段階で重力崩壊を起こします。 その結果、超新星爆発が起こり、それと同時に、中性子星あるいはブラックホールが誕生すると考えられています。場合によっては、ガンマ線バーストが付随するかもしれません。われわれのグループは 、この高エネルギー・強重力現象の解明を目指します。このような現象には、自然界に存在する4つの力(重力、電磁気力、強い相互作用、弱い相互作用)のすべてが重要な役割を果たすため、物理法則の総合的な理解が必要となります。
重力崩壊および超新星爆発のシミュレーションを完全に第一原理的に行うには、以下の手順が必要となります。アインシュタイン方程式を解いて一般相対論の効果を取り入れながら磁気流体力学方程式を解き、かつ実空間3次元、位相空間3次元、計6次元のボルツマン方程式を解くことによりニュートリノ輸送の効果をも取り入れなくてはなりません。さらに、陽子、中性子、ヘリウム、原子核、電子などの数密度分布の発展を、弱い相互作用と強い相互作用を考慮しながら追わなくてはならないのです。京速コンピュータ「京」全部を使ったとしても、これらすべてを完全に取り入れることは不可能です。そこで、このような究極的目標に向け、われわれは以下の現実的目標の達成を目指します。
実空間3次元・エネルギー位相空間 1次元の計4次元の近似的ボルツマン方程式を解きながら高分解能輻射流体計算を世界で初めて行い、ニュートリノ加熱機構に基づく超新星爆発機構の解明を目指します。世界初 の空間3次元の輻射流体シミュレーションにより、流体力学的不安定性に付随した複雑なニュートリノ輸送効果およびその爆発への効果が正確に解明されることを期待します。
ニュートリノ輻射の効果など現実的物理素過程を取り入れながら、空間3次次元の高解像度磁気流体シミュレーションを世界で初めて行います。そして、磁気乱流による爆発モデルを高精度で調べます。これにより、磁気流体不安定性が爆発現象におよぼす効果が解明されるだけでなく、ガンマ線バーストなどで見られるジェットの形成過程へのヒントが得られる可能性があります。
空間3次元、ニュートリノ輻射に対する位相空間1次元、時間1次元の3+1+1次元シミュレーションを完全に一般相対論的に実行します。これは世界的に試みすらないシミュレーションであり、実行されれば大きなインパクトを与えると考えています。これまで詳細に考慮されてこなかった対称性の少ない時空における一般相対論的効果が解明されるとともに、ブラックホールの形成過程、ガンマ線バーストの中心源の誕生過程が解明できるなどの成果を期待しています。
空間3次元、位相空間3次元、時間1次元の3+3+1次元すべてを考慮した完全なニュートリノ輻射輸送方程式を解きながら、輻射流体シミュレーションを実行します。これは今まで世界的に計画すらされていない研究テーマです。実行できれば、他分野を含め世界的に強烈なインパクトを与えることは間違いありません。
構成メンバー
研究開発課題責任者
柴田 大 Masaru Shibata 京都大学基礎物理学研究所 教授
メンバー
諏訪雄大 Yudai Suwa 京都大学基礎物理学研究所 特定准教授/Max Planck Institute for Astrophysics (MPA) 日本学術振興会海外特別研究員
木内建太 Kenta Kiuchi 京都大学基礎物理学研究所 特任助教
長倉洋樹 Hiroki Nagakura 京都大学基礎物理学研究所 研究員
岩上わかな Wakana Iwakami 京都大学基礎物理学研究所 研究員(早大勤務)
山田章一 Shoichi Yamada 早稲田大学理工学術院 教授
住吉光介 Kousuke Sumiyoshi 沼津工業高等専門学校教養科 教授
固武 慶 Kei Kotake 福岡大学理学部 准教授
関口雄一郎 Yuuichirou Sekiguchi 東邦大学理学部 講師
滝脇知也 Tomoya Takiwaki 理化学研究所 研究員