2013年2月5日(火)~6日(水)、東京大学本郷キャンパス理学部4号館でGCOE(東京大学グローバルCOE)分野横断研究会「多体相関の数値解法」が開催されました。計算科学によって原子核、量子化学(分子など)、固体物理(金属や半導体など)の多体相関を研究する国内外の研究者や学生ら41人の参加がありました。
スーパーコンピュータ「京」に見られるような計算機性能の向上や計算手法の発展により、近年、物質や原子核をつくる粒子がそれぞれに力を及ぼしあう様子(多体相関)を計算することで、構造や性質をより精密に調べることができるようになりました。
原子核をつくる陽子・中性子、分子、金属、半導体を構成する原子・電子は、粒子であると同時に波としての性質も持っていて、その振る舞いは古典力学ではなく量子力学によって理解されます。
各分野によって階層も質量も異なる粒子を研究対象としていますが、これらの粒子の振る舞いを量子力学の基本原理に従って数値計算することから、密度汎関数法、量子モンテカルロ法など共通の計算手法を用いて研究が進められています。
したがって各分野とも同じような問題を抱えています。今田正俊(いまだ・まさとし)東京大学大学院工学系研究科教授は「ある分野で共通の問題が解決できたら、他の分野でもその解決方法を応用することができます。問題解決のヒントがもらえると、自分の取り組みと組み合わせて解けることがあります。このような分野横断型研究会はとても有意義です」と話します。
HPCI戦略プログラム分野2の統括責任者、常行真司(つねゆき・しんじ)東京大学大学院理学系研究科教授は、量子化学で用いられていた手法を固体の計算に応用できるよう開発したトランスコリレイティッド法の最近の発展について発表しました。
しかし、これまでは分野間の交流が活発とはいえず、同じような手法がそれぞれの分野で、独立に開発されてきた傾向があります。参加者は手法や共通する課題について検討し、今後の展望を熱心に議論しました。
2日目は雪による交通の乱れがあったにも関わらず、多くの参加者がありました。最後に世話人の一人でHPCI戦略プログラム分野5研究開発課題2の責任者である大塚孝治(おおつか・たかはる)東京大学大学院理学系研究科教授は、「予想以上に多くの研究者や学生が参加してくれました。この分野に強い関心が注がれていることを実感しました。また同じテーマで研究会を開催するのでぜひ参加してほしい」と挨拶して、研究会を締めくくりました。