福岡に国内外から多くが集う-FEW-BODY

8月20日(月)~25日(土)に福岡国際会議場でIUPAP(国際純粋・応用物理学連合)認定の第20回少数系物理国際会議(FB20)が開催され、日本を含む世界29カ国から303名の理論、実験、計算科学の研究者が集まり、午前中のプリナリーセッション、午後のパラレルセッションともに活発な議論繰り広げられました。

FB20は少数多体系という研究分野の国際会議で、1959年に最初の会議がロンドンで開催されてから、今回で20回目となります。最初は原子核を構成する陽子や中性子などの核子3つが束縛しあうときに働く力「3体力」が主なテーマでしたが、近年では、核子でなく、核子を構成するクォーク3つに働く力を扱ったり、4体問題、5体問題を扱ったりと、研究対象が広がってきました。

プリナリーセッションでは、HPCI戦略プログラム分野5の研究者2名が発表を行いました。21日(火)は、研究開発課題1「格子QCDによる物理点でのバリオン間相互作用の決定」のメンバーである、理化学研究所仁科加速器研究センターの土井琢身研究員。22日(水)には、研究開発課題2「大規模量子多体計算による核物性解明とその応用」の責任者を務める、東京大学大学院理学系研究科の大塚孝治教授です。他にも分野5の多くの研究者が参加し、パラレルセッションで発表したり、議論に加わったりと活躍しました。

核力は、クォーク・グルーオンを記述する量子色力学(QCD)を用いて理解することができるはずですが、QCDを数学的に解いて答えを求めることが困難なため、これまでは核子を単位とした研究が進められてきました。しかし、近年の理論的進展、およびスーパーコンピュータ性能の発展によって、QCDから直接核力を求めることが可能になりつつあります。土井研究員は、この格子QCDという数値シミュレーション手法による3体力研究の成果について報告し、今後はスーパーコンピュータ「京」を使い、QCDから直接3体力を求めることを目ざすと話しました。

鉄より重い原子核は、超新星爆発で中性子数が陽子数よりもずっと多いエキゾチック原子核が大量に、多種にわたって生成された後、それらに連鎖反応が起こって作り出されたと考えられています。大塚教授らの研究により、陽子数によって中性子数を加えられる数に限界があり、それは3体力の働きによることが分かりました。大塚教授は、3体力を研究することは元素合成の過程を理解するために非常に重要だと述べました。

会議中の22日(水)に、市民講演会「最先端加速器で宇宙の始まりを探る~LHC実験と国際リニアコライダー計画~」が開かれ、170名以上の参加がありました。講演者の九州大学・川越清以(かわごえ きよとも)教授はヒッグス粒子や素粒子について説明した後、LHCとILCの仕組みを話しました。LHC実験は、スイスのジュネーブ郊外にある欧州合同原子核研究機関(CERN)で行われており、質量の元となるヒッグス粒子を見つける研究が実を結びつつあります。ヒッグス粒子をより精度よく調査するためには、国際リニアコライダー(ILC)という新たな加速器が必要です。建設地はまだ決まっておらず、日本の候補地の1つが福岡、佐賀両県にまたがる脊振(せふり)山地です。講演後は来場者から多くの質問が寄せられ、川越教授は丁寧に答えていました。

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