7月26日、筑波大学計算科学研究センターで、異分野交流研究会「量子系の固有値問題と大規模計算」が開催されました。
HPCI戦略プログラムは分野間の交流を積極的に進めており、分野5「物質と宇宙の起源と構造」は、まず分野2「新物質・エネルギー創成」との交流研究会を実施することになりました。今回はその第1回となります。分野2、分野5の多様な研究者53人が参加し、分野間連携という初めての試みのなか、手探り状態ながらも活発な議論が交わされました。
第1回のテーマを「量子系の固有値問題と大規模計算」としたのは、量子系の構造やダイナミクスに対する大規模計算は、基礎科学・応用科学を問わず、多くの分野で中心的な課題となっているからです。分子以上を扱う分野2と原子核以下を扱う分野5では物質階層は異なりますが、量子系の計算によく似た方法が用いられるため、共通する多くの課題があるのです。
分野2からは、高精度量子化学計算、固体電子構造計算の最近の発展、量子スピン系の物性解明などの話題が提供されました。分野5からは、原子核の大規模殻模型計算、格子QCDにくわえ、計算機科学から大規模固有値問題の並列解法について話題提供がありました。
最後のディスカッションでは、交流研究会で今後どのようなテーマを扱っていくべきかの議論がされました。モンテカルロ計算での負符号問題、量子系の散乱問題といった具体的なテーマがあがり、今回の研究会の世話人代表である矢花 一浩(やばな・かずひろ)・筑波大学教授からは、テーマを絞る方が、議論が盛り上がるのではないかという意見が出ました。
また、計算科学(アプリケーション)側と計算機科学(システム)側との交流も積極的に行ったほうがよいとの意見が出ました。システム側の櫻井 鉄也(さくらい・てつや)・筑波大学教授から、「アプリケーション側の発表で、シミュレーション結果だけでなく、計算方法を聞きたい」との発言がありました。
最後に矢花教授から、「自分が知らない分野の話は新鮮で、文化の違いを楽しめました。この研究会は年に2回くらいのペースでやっていけたらと思います」との言葉がありました。次回は場所を分野2の拠点に移して開催する予定です。