HPCI戦略プログラム分野5ワークショップ(5/19)開催報告

「HPCI戦略プログラム分野5ワークショップ」が、5月19日に筑波大学計算科学研究センターにおいて開催されました。このワークショップは、分野5が実施する研究開発課題の推進と、計算科学技術推進体制の構築について、広く分野内外の意見を聞きながら今後の計画について議論する場です。3月23日に開催する予定でしたが、東日本大震災の影響で、2カ月遅れの開催となりました。参加者は79名でした。

分野5統括責任者の青木慎也・筑波大学教授

「これまで計算科学の蓄積がある我々の分野は、最高性能のスパコン「京」を使えば成果は出ると考えています。しかし、それにとどまらず、新しいアイデアを乗せてさらに良い成果を出していければと思います。そのためにも、順調な面だけでなく、困難な点も含めて活発な議論をお願いします」。ワークショップは、分野5統括責任者の青木慎也・筑波大学教授の言葉で始まりました。

分野5には4つの研究開発課題があります。課題1「格子QCDによる物理点でのバリオン間相互作用の決定」では、「京」のパワーを生かした計算を行います。ハドロン質量の実験値の再現において、これまでuクォークとdクォークの質量を等しいとする「2+1」(mu=md≠ms:sはストレンジクォーク)で計算していたものを、「1+1+1」(mu≠md≠ms)で行います。

研究開発課題2の大塚孝治・東京大学教授

課題2「大規模量子多体計算による核物性解明とその応用」では、限界が見えてきた殻模型による原子核構造の計算を、モンテカルロ殻模型でチャレンジします。また、3年目に挑戦する予定だった「Hoyle State」(3つのHe原子核から12Cが生成する過程)の解明を前倒しで行うことも発表されました。これには「衝撃的」とのコメントがありました。

課題3「超新星爆発およびブラックホール誕生過程の解明」では、いかに計算機上で超新星爆発を起こすかの具体的方策が示されました。球対称(1次元)では爆発しないことはこれまでの蓄積によりほぼ確定しているので、2次元あるいは3次元で計算していくとのことです。

白熱する議論

課題4「ダークマターの密度ゆらぎから生まれる第1世代天体形成」では、宇宙初期のゆらぎに関する議論、銀河形成の手法に関する議論が行われました。

いずれの議論でも、「日本はこれまで優位を保ってきたが、他国の追い上げも激しく、「京」を使えば必ず勝てるという状況ではない」との認識が示されました。より一層の努力が必要とのことで意見が一致しています。

体制構築では、異分野連携、人材養成、社会に向けた情報発信などの説明がありました。連携についての議論の中で、「京」の利便性向上についても言及がありました。利便性と安全性をいかに両立させるか、格子QCD基礎データ共有データグリッド「ILDG/JLDG」の運用例をあげつつ、議論がされました。

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