2023年2月8日に第18回HPC-Phys勉強会を開催しました。この勉強会は、計算基礎科学連携拠点(JICFuS)と理化学研究所R-CCSの共催です。参加者は講師含め24名でした。
今回もオンサイトとオンラインを組み合わせたハイブリッドでの開催となりました。オンサイトの会場は、神戸大学統合研究拠点です。
一つ目の講演では、前回に引き続きベンダーの方をお招きしてプロファイラーの使い方を解説していただきました。講演者はインテルの野村さんで、oneAPI Base/HPC Toolkit を用いた性能解析をチュートリアルを交えて紹介してくださいました。手元のパソコンでの性能を測定する際は、プロファイラのGUI経由でプログラムを実行しながら測定できます。一方、スパコンでの性能解析では、遠方のスパコンでプログラムを実行して必要な情報を採り、その結果を手元のプロファイラで解析することになります。スパコン上での情報採取に必要なCUIコマンドの例や、プロファイラの結果をもとにしたチューニングの例など、非常に実践的な内容となりましました。
量子コンピュータの実用化に向け、量子回路のシミュレーションは欠かせません。2つ目の講演では、東工大の大友さんからGPUを使った量子回路のシミュレーションの話をしていただきました。量子回路をテンソルネットワークの手法で計算すると大規模な行列計算に帰着します。一方、最近のGPUでは、NVIDIAのテンソル・コアのように機械学習の高速化を念頭においた行列演算回路が備わっています。ただ、計算精度が低いため HPC の用途には使いにくいものになっています。必要精度があまり高くない(単精度)のであれば、計算途中で精度が落ちない工夫をすることで、テンソル・コアを用いて量子回路のシミュレーションを高速化できるとのことでした。
この勉強会は HPC-Phys というとことで、物理分野の研究者がスパコンなどの計算機を使うための情報交換を目的に掲げています。昼食を挟んだ午後の講演では、物理の方から相談を持ちかける講演となりました。理化学研究所の吉田さんの講演で、彼らが解きたい問題は巨大な密行列の対角化に帰着するが、その行列が大きすぎて解くのが大変で困っているとのことでした。スパコン「富岳」を使ってもそのままでは解けない大きさになってしまうということで、計算手法に加えて行列サイズを小さくする方法など、参加者を巻き込んだ活気のある議論がなされました。
講演資料は、勉強会 web site からご覧になれます。
http://hpc-phys.kek.jp/
世話人の一人である金森さんからは
「ご講演者、参加者の皆様はもちろん、会場の確保や当日の運営にご尽力いただいたアドバイザーの永井さん、神戸大学統合研究拠点のアシスタントの方々に感謝いたします。今回もハイブリッド開催としましたが、対面・オンラインにも利点があるので、今後もいろいろなスタイルで開催できればと考えています。」
とコメントをいただきました。
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- HPC-Phys勉強会HP:High Performance Computing Physics