超巨大ブラックホールから吹く「風」の再現に成功
京都大学
2020 年 11 月 19 日
概要
超巨大ブラックホールから吹く「風」の謎を解明概要宇宙には数多くの銀河があり、その中心には超巨大ブラックホールが存在しています。ブラックホールは周りにあるガスを次々に吸い込んでいきますが、なかにはブラックホールに吸い込まれずに、外に向かって高速で吹き出すガスも存在します。強い重力源であるはずのブラックホールから重力に逆らって「風」が吹き出すのは、一見不思議な現象です。このような「風」の存在はこれまでのX線観測から知られていましたが、どうやって吹いているのかについてはまだ分かっていませんでした。京都大学白眉センター/理学研究科の水本岬希特定助教を中心とする国際研究グループは、X線の擬似観測によって実際に観測されている「風」の様子を定量的に再現し、ブラックホールの周りで生み出される紫外線の力によって「風」が生まれるということを世界で初めて実証しました。今後は、2022年度に日本で打ち上げが予定されているXRISM衛星を使うことで、風の様子をこれまでにないほどはっきりと捉えることができると期待されます。本成果は2020年11月19日に英国の国際学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(王立天文学会月報)」にオンライン掲載されました。
本研究は京都大学、呉高専、筑波大学、東京大学、ダラム大学「(University「of「Durham、「英国)「の研究者によって、科学研究費助成事業「(16K05309、17H01102、18K03710、18H04592)、「カブリ数物連携宇宙研究機構「(NSF「PHY17-48958)、「ポスト「「京」重点課題9、「計算基礎科学連携拠点、「日本学術振興会海外特別研究員制度、「京都大学白眉センター、「英国科学技術施設研究会議「(ST/P000541/1)の支援を受けて行われました。
くわしくは京都大学のプレスリリースをご覧ください。
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2020/201119_1.html
研究者のコメント
ブラックホールはこの宇宙で最もエキセントリックで最も派手な天体の一つです。ブラックホールから「風」が吹く,という現象はとても不思議で,それゆえ私を含め多くの研究者を魅了しています。今回の研究を通じて,ブラックホールの不思議の一端を解き明かすことができたことにとても興奮しています。(水本)
掲載論文
- タイトル:
- UV line driven disc wind as the origin of ultrafast outflows in AGN
(活動銀河核における超高速アウトフローの起源としての紫外線ライン駆動型円盤風) - 著者:
- Misaki Mizumoto, Mariko Nomura, Chris Done, Ken Ohsuga, Hirokazu Odaka
- 掲 載 誌:
- Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
- DOI:
- 10.1093/mnras/staa3282
用語解説
XRISM衛星:X線分光撮像衛星 (X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission; 発音はクリズム)。日米欧協力により開発されており,2022年度にJAXAから打ち上げが予定されている。マイクロカロリーメータという検出器が搭載され,これを用いることで従来のCCD検出器による観測と比べて1桁以上のエネルギー分解能の向上が期待される。
問い合わせ先
氏名(ふりがな) 水本岬希(みずもとみさき)
所属・職位 白眉センター/理学研究科 特定助教
TEL:080-8426-5984
E-mail:mizumoto[at]kusastro.kyoto-u.ac.jp([at]を@に変えてください)