2019年11月7日(木曜)に早稲田大学(西早稲田キャンパス)を本会場、神戸の理化学研究所をサテライト会場として、第5回HPC-Phys勉強会を開催しました。この勉強会は、計算基礎科学連携拠点(JICFuS)およびポスト「京」重点課題9「宇宙の基本法則と進化の解明」と早稲田大学高等研究所の共催です。
今回は物理における機械学習をテーマとしました。前半は、『ディープラーニングと物理学』の著者の一人である富谷昭夫さんを講師に招き、ディープラーニング(DL)の基礎的な概念のレクチャーとDLプログラムのハンズオンを行いました。後半は、自身の研究に機械学習を取り入れている山本貴宏さん、田中章詞さん、山地洋平さんらをお招きして、最新の研究についてお聞きしました。
人気のテーマのためか、これまでの平均的な参加者数よりも多い91名の参加者が集まりました。参加者の分野も、宇宙論、素粒子論、原子核、物性から物理化学に至るまで多岐にわたりました。そのうち20名程度は学部、大学院生の参加で、年齢層の幅も広かったですが、終始和やかで協力的な雰囲気のなか勉強会を行うことができました。90%以上の参加者が事前にお願いしていたプログラムのライブラリ環境を自身で準備して来場されており、その点からも参加者の機械学習への興味の高さが窺えました。早稲田内に本会場のほかにサブ会場を設け、サブ会場にホスト計算機を設置して参加者を分け、余裕をもって会場全体を使うこともできました。勉強会の後に行われた懇親会も和やかな雰囲気で行われ、29名(うち講師3名)の参加者が集まりました。
午前中のレクチャーでは、午後のハンズオンに対応した深層学習の講義をホワイトボードを使って行っていただきました。ざっくばらんなスタイルの講義で、富谷さんの魅力が良くでた講義となりました。午後のハンズオンも機械学習の分野のABCに相当する「アヤメの分類」のプログラムを、穴埋め形式で出題し、参加者でプログラムを作っていくというスタイルで行われました。短い時間でしたが、深層学習の手始めには十分といえるものでした。また、その発展的な内容としてイジング模型の相転移の分類をするDLプログラムの紹介もありました。チュートリアルは、本会場とサテライト会場の双方からたくさんの質問が出て、非常に活発なやり取りが展開されました。
後半の研究紹介のセッションでは、山本貴宏さんは重力波のデータ解析に深層学習をどのように使えばよいかという話をしてくださいました。深層学習を使って、宇宙から飛来した信号の方向を素早く評価したいという研究で、将来の発展が期待されます。田中章詞さんのホログラフィック模型への深層学習の応用の話も、田中さんの魅力的なトークが会場を沸かし、参加者の興味をかき立てるものでした。山地洋平さんの研究では、高温超伝導の発現機構に機械学習を使うことで、これまでと全く違った理解が得られうるという非常に興味深い話で、山地さんの物理への深い洞察が窺える素晴らしい内容のトークでした。
参加者で世話人の一人である加堂さんからは「前半のチュートリアと後半の最新の専門研究の複数トークを組み合わせた構成も、初級レベルのチュートリアルとのバランスが取れており、全体として良い構成だったかと思います。今回お呼びした講師陣の話はクリアで大変わかりやすく参加者に伝わりやすい勉強会になりました。」とコメントをいただきました。
講演資料は勉強会 web site
http://hpc-phys.kek.jp/
をご参照ください。