2015年6月13日(土)に高エネルギー加速器研究機構(KEK)にて公開講座が開催され、計算基礎科学連携拠点 副拠点長の橋本省二KEK教授、連携研究員の岩野 薫 KEK研究機関講師が講演を行いました。180人強が熱心に受講し活発な質疑応答がありました。質疑応答の時間におさまらず、講演後も質問のために長蛇の列ができました。
橋本氏の「スパコンと素粒子・宇宙」と題する講演では、初めにスマホとスパコンの比較を紹介しました。スマホもスパコンも計算速度にあまり差はないものの、スパコンはスマホの通信速度より200倍速いことを示しました。続いてスパコンを使った研究成果として格子QCDの紹介をしました。これまでは計算パワーが足りなかったので実際と異なる質量で素粒子クォークのシミュレーションをしていましたが、スーパーコンピュータ「京」により、実際の質量でシミュレーションできるようになったとのこと。他にも元素はどこでできたのか、宇宙の大規模構造、超新星爆発などスーパーコンピュータ「京」などの最新のスパコンでもたらされた最新の研究成果について動画を交えて説明しました。
岩野氏は「階層性」「離散化」「多体問題」をキーワードにスパコンを使った物質の性質研究について説明しました。「多体問題」は、粒子がたくさんあると粒子同士で反応がおきるので、1個だけのときと異なった物理現象が観測されます。「階層性」は物理現象を全部根源的な物質から理解するのではなく、ある階層内で有効なモデルを考え、なるべく正確にその問題を解けばそれで十分と説明しました。たとえば磁石の研究をするのに素粒子の反応から計算をする必要はないということです。「離散化」は空間をコンピュータが扱えるメッシュ上に区切って計算します。具体的な研究として、レアアースを使わない強い磁石の開発、グラファイトからダイアモンドの光誘起相転移の紹介がありました。
受講者は「中性子星の内部状態にはずっと興味があって勉強してきました。今後の研究の進展を楽しみにしています」と感想を寄せていました。