格子QCDの裾野を広げる-素核宇宙融合レクチャー

130626-27lecture12013年6月26日(水)~27日(木)、理化学研究所研究本館にて非専門家を対象とする素核宇宙融合レクチャーシリーズ第9回「ゼロからの格子QCD入門 -有限バリオン密度系の研究を目指して」が開催されました。中村 純(なかむら・あつし)広島大学教授を講師に迎え、これまでで最高となる56人の参加がありました。

今回のレクチャーは、格子QCDシミュレーションの経験の浅い学生・研究者が、自分の研究のためのシミュレーションを一人で行えるようになることを目指しました。そのためか、学生や若いポスドクの参加が目立ちました。

QGPクォーク・グルーオン・プラズマ

予想されるQCD相図。クォークとグルーオンは温度と密度に応じて異なる状態をつくる。低温低密度(左下)ではクォークは陽子や中性子などのハドロン内に閉じ込められているが、高温や高密度ではクォーク・グルーオン・プラズマ状態へ相転移すると考えられている。

中村教授は、格子QCDの歴史から話し始めました。格子QCD(格子ゲージ理論)は、ハドロンの研究や場の理論などに使われる便利な道具です。黎明期には、ハドロン物理の研究者と場の理論の研究者が格子QCDの分野に参入しました。中村教授の出発点はハドロン研究で、温度と密度により描かれる相図を完成させることがテーマです。過去の格子QCDはゼロ温度、ゼロ密度によるものでした。温度と密度を変えていけば、クォーク・グルーオン・プラズマなどいろいろな顔を見せてくれるはず。それを知りたいと考えています。

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修士課程から本格的に格子QCDの勉強をしている広島大学の村上祐子(むらかみ・ゆうこ)さんは「広島大学では、中村先生は格子QCDの講義をしていないので、このレクチャーシリーズに参加しました」と話しました。格子QCDだけでなく場の理論を学んでいる学生の参加も目立ちました。

レクチャーの最後にコラボレイターを募集したところ、修士2人、博士1人、ほか2人での小さなプロジェクトができました。これからの研究の進展に期待です。

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