2017年2月8日、日本学士院において、第13回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞の授賞式が行われ、ポスト「京」重点課題9「宇宙の基本法則と進化の解明」サブ課題C「大規模数値計算と広域宇宙観測データの融合による宇宙進化の解明」責任者である東京大学大学院理学系研究科・吉田直紀教授に、賞状、賞牌、副賞が授与されました。
吉田教授の受賞理由は「大規模数値シミュレーションに基づく初期宇宙での構造形成の研究」です。吉田教授は共同研究者とシミュレーションコード「GADGET」を開発し、スーパーコンピュータを使って、初期宇宙の構造形成や進化、第一世代星形成について研究を行ってきました。
その結果、第一世代星は太陽質量の約1%の原始星から出発して、太陽の数十倍から百倍の重さにまで成長した星であることが示されました。シミュレーションでは第一世代の巨大質量星がブラックホールへと崩壊していく経路も見られ、これは超巨大ブラックホールの起源を示唆しています。
GADGET は、大規模数値シミュレーションによる宇宙研究の分野で、今や標準ツールとなっています。吉田教授と共同研究者によるGADGETの開発とシミュレーション研究の成果の数々が、宇宙進化の理解に新しい時代を開きつつあり、今後の発展が期待されるとして、日本学術振興会賞および日本学士院学術奨励賞の受賞につながりました。
両賞の授与にあたり、吉田教授は「このようなすばらしい賞をいただき大変光栄です。ポスト「京」重点課題9などで行っているシミュレーション手法による宇宙研究を評価していただいたことをうれしく思います。これからもますます研究に励みます」と述べました。
日本学術振興会賞は、人文・社会科学及び自然科学の全分野における優れた研究業績をあげた若手研究者(45歳未満)を顕彰・支援し、日本の研究水準を世界トップレベルに発展させることを目的として2004年度に設立された賞です。今回は25名の若手研究者が選ばれました。
日本学士院学術奨励賞は、優れた研究成果をあげており今後の活躍が特に期待される若手研究者を顕彰し、今後の研究を奨励することを目的として2004年に設立されました。受賞者は、日本学術振興会賞の受賞者の中から選ばれます。今回は若手研究者6名に授与されました。
授賞式にご臨席された秋篠宮殿下からは「本日受賞された皆さまは、大変優れた業績を上げておられますが、この受賞を一つの契機として、今後さらに充実した研究を進められ、世界的に活躍されることを願っております」とのお言葉をいただきました。