2018年10月3日(水)に、筑波大学計算科学研究センターにおいて、第5回ポスト「京」重点課題9研究報告会を行いました。参加者はTV会議を含めて16名でした。
報告者は3つのサブ課題から計5人。それぞれ30分間ほど講演し質疑が行われました。
サブ課題Bの角田佑介・東京大学大学院理学系研究科 特任研究員は、水銀同位体原子核の表面の形についての発表をしました。水銀同位体原子核の表面の形は、基本は球形で、中性子数が101、103、105のときのみ楕円体に変化することが実験から知られていました。これは、現象としては50年以上昔から知られていましたが未だ理論的な説明は行われておらず、長らく謎として扱われてきました。角田さんたちの研究グループはこれまでもNi、Zr、Sn、Smなどの原子核の表面形状について研究を行っており、今回はスーパーコンピュータ「京」でのモンテカルロ殻模型計算と新たな多体メカニズムの発見により、この異常な現象の解明に成功しました。角田さんのこの研究は、先日プレスリリースにて報告をされています。(水銀原子核はハムレット)
サブ課題Aの青木保道・高エネルギー加速器研究機構 特任准教授はQCD有限温度相転移についての研究を行っています。QCDは物質を構成する基本要素:クォークについての理論ですが、青木さんはQCD相図の研究を通してQCDそのものについての理解を深めることが目標です。発表では2世代で考えたQCD相転移について、相図の中で見えた1次相転移の振舞いの詳細について解説いただきました。現状では相転移の有無についてははっきりとした結論付けが難しく、さらなる研究が期待されるとのことです。
発表の詳細および、他の報告者の発表については以下の資料をご覧ください。
報告者
サブ課題C「軸対称磁場による銀河渦状腕の不安定化とクランプ形成」
井上茂樹・東大IPMU 特任研究員
講演スライド
サブ課題B宇宙「連星中性子星合体に対する一般相対論的輻射磁気流体計算」
木内建太・京都大学基礎物理学研究所重力物理学研究センター 特任准教授
講演スライド
サブ課題B原子核「モンテカルロ殻模型による水銀同位体の原子核形状の研究」
角田佑介・東京大学大学院理学系研究科 特任研究員
講演スライド
サブ課題B格子QCD「Current matrix element in HAL QCD’s potential method」
石井理修・大阪大学核物理研究センター 准教授
講演スライド
サブ課題A「QCDの有限温度相転移とトポロジーーサブ課題A「QCD相転移」ー」
青木保道・高エネルギー加速器研究機構 特任准教授
講演スライド
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