金やウランなどの重い元素は中性子星の合体で作られた可能性が高い
-鉄より重い元素の起源を数値シミュレーションで解明-
2014年7月25日
独立行政法人理化学研究所
国立大学法人京都大学
ポイント
・スーパーコンピューターによる中性子星合体現象の数値シミュレーション
・中性子核融合によりつくられる元素の組成が太陽系の重元素分布と合致
・従来の研究で予想されていた中性子の割合とは大きく異なる結果に
要旨
理化学研究所(理研、野依良治理事長)と京都大学(松本紘総長)は、地球上に存在する金やウランなど鉄より重い元素が、中性子星合体によってつくられたものである可能性が高いことを明らかにしました。これは、理研理論科学連携研究推進グループの和南城伸也研究員、京都大学基礎物理学研究所の関口雄一郎特任助教ら共同研究チームの成果です。
水素やヘリウムは宇宙の始まりのビッグバンにより生成され、それより重い鉄までの元素は恒星内部の核融合により生成されます。レアアース、金やウランなど鉄よりさらに重い元素は、大量の中性子の核融合により生成されると考えられています。しかし、その大量の中性子の核融合がどのような天体現象によるものなのかについては、長い間明らかにされていませんでした。それは中性子星合体によるものであるとする説がありますが、これまでの研究によると、放出される物質のほとんど(90%以上)が中性子であるために非常に重い元素だけがつくられると考えられ、太陽系や他の恒星で観測される重元素組成を説明できないことが問題となっていました。
共同研究チームは、東京大学などのスーパーコンピューターを用いて、一般相対性理論とニュートリノの影響を考慮した場合の中性子星合体の数値シミュレーションを行いました。その結果、中性子の一部がニュートリノを吸収して陽子に変わるため、中性子の割合が60~90%程度にまで減少することが分かりました。この数値シミュレーション結果をもとに元素合成の数値計算をしたところ、観測による太陽系の重元素分布とほぼ一致していました。これにより、今まで明らかにされていなかった金やウランなどの鉄より重い元素の起源が中性子星の合体である可能性が高いことが示されました。
本研究は、文部科学省HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」および計算基礎科学連携拠点(JICFuS)の協力の元で実施したものです。研究成果は、米国の科学雑誌『The Astrophysical Journal Letters』(7月10日号)に掲載されました。
詳細は理化学研究所プレスリリースをご覧ください。