J-PARCでのハドロン物理解明に連携して臨む

130211-13workshop12013年2月11日(月)~13日(水)の3日間、茨城量子ビーム研究センター(茨城県東海村)で、ワークショップ「Future Prospects of Hadron Physics at J-PARC and Large Scale Computational Physics in 2013」が開催されました。このワークショップはハドロン物理を研究する理論、実験、計算科学それぞれの研究者の連携強化を目的に開催され、海外からの参加者13人を含む、57人の研究者が参加しました。最終日の13日には隣接するJ-PARCのハドロン実験施設の見学会が開催されました。

ハドロンはクォークにより構成される複合粒子で、3つのクォークからなるバリオン、バリオンの一種でストレンジクォークの入ったハイペロン、原子核の中で核子をくっつけたり、退けたりするクォーク2個からなる中間子、4個や5個からなるエキゾチックハドロンなどの種類があります。陽子、中性子はハドロンの一種で、核力により結びついて原子核を構成することから、二つをまとめて核子と呼びます。ハイペロンは中性子星のような高密度状態では自然に存在すると考えられていますが、地球上には存在しないため、J-PARCなどの加速器で人工的に作り出し研究が進められています。

130211-13workshop2私たちの体を構成する物質がバラバラになったり、ブラックホールになったりせずに存在するのは、核子の間にちょうどいい強さの核力が働いているからです。また私たちの宇宙に存在する鉄より重い元素は、超新星爆発やその残骸である中性子星同士の衝突によって生み出されたと考えられています。J-PARCのハドロン実験施設では、ハイペロンやハイパー核(ハイペロンが入った原子核)、ストレンジクォークが入ったK中間子、チャームクォークが入ったD中間子などを人工的に作りだして、核力の性質、ストレンジクォークやチャームクォークを持つハドロンの構造、そのようなハドロンを含む原子核の性質などが調べられています。

研究会では理論・実験・計算科学それぞれから、バリオン間の相互作用、ストレンジクォークを含んだ原子核(ハイパー核・K中間子原子核)、そして核子の構造、チャームクォークやボトムクォークといった重いクォークを含むエキゾチックハドロンおよび原子核について発表がなされました。また宇宙にある中性子星と関連し、高密度核物質、ストレンジネスの効果、その構造解明に重要となるニュートリノと原子核の反応について活発な質疑応答が繰り広げられました。中性子星とハドロン物理、格子QCDとハドロン物理、といったように、これまで独立に議論していた分野が融合した研究会となりました。実験、理論の発表の中で計算科学に対しては、チャーム・ボトムクォークハドロンの高精度な格子QCDシミュレーション、有限密度下での格子QCDシミュレーション、ストレンジクォークが入っている粒子の系統的な相互作用のシミュレーションをしてほしいといった要望が寄せられていました。

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