ここでは素粒子・原子核・宇宙・スパコンの研究分野で用いられる用語について解説しています。
あ行
アーネスト・ラザフォード:
1871年8月30日~1937年10月19日。ニュージーランド出身の物理学者、化学者。原子核以外にも、α線やβ線を発見している。1908年にノーベル化学賞を受賞。
移流方程式:
移流(いりゅう)とは、流れに沿って物質が移動する現象のことで、これを記述したものを移流方程式と呼ぶ。ブラソフ方程式を数値的に計算する場合は、分布関数に対する移流方程式を空間方向に3本、運動量方向に3本計算することになる。
か行
カイラル対称性:
量子色力学(QCD)において、クォークに右巻きのスピン成分と左巻きのスピン成分の2つがあり、これらは鏡に対して対称な関係にあるため、同一と見なすことができないこと。南部陽一郎氏がノーベル物理学賞を受賞した「自発的対称性の破れ」の“対称性”とは、このカイラル対称性のことを指す。南部氏の業績により、カイラル対称性を持った系がエネルギー的に安定な真空に落ち着くことで、クォーク・反クォーク対が凝縮し、自発的対称性の破れが発生することが明らかになった。
殻模型:
殻とは、原子核内が『殻』のような構造をもっているのではなく、陽子や中性子の数が特定の数(2、8、20、28、…)をとったときに全体として特に安定になることを意味する。たとえば48Ti(陽子22、中性子26)の場合、陽子20個、中性子20個で極めて安定な“閉殻”ができると考える。閉殻は安定なため動かないものとし、残りの陽子2個、中性子6個を扱った8体問題を完全に解くのが殻模型計算の考え方である。1主核計算は陽子20個、中性子20個を閉殻に取り、2主殻計算は陽子8個、中性子8個を閉殻に取ることを指す。2主殻計算では32体問題を考えることになる。
銀河フィラメント:
銀河がひも状に集まっているものを銀河フィラメントと呼び、フィラメント同士が交差している部分に銀河団が存在する。銀河は数百から千個程度集まって銀河団を形成し、さらに、銀河団が複数個集まり、超銀河団を形成している。
クォーク:
物質を構成する基本要素で、6種類(アップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、ボトム、トップ)が知られている。
グルーオン:
陽子や中性子などの内部でクォーク同士を結び付ける、強い力を伝える粒子。クォークと同様“色”を持ち、その違いによって8種類のグルーオンが存在します。
固有値:
線形空間で、あるベクトルを線形変換した結果が、そのベクトルの定数倍に等しくなる時のその定数(1個とは限らない)。
さ行
初代星:
宇宙初期に誕生した第1世代の星のこと。
た行
単位行列:
正方行列のうち、右下がりの対角線上にある成分が すべて1で、残りの成分がすべて0の行列。
中性子星:
大質量星の晩年に超新星爆発が起こり、その中心核から作られる星。原子核を構成する中性子を主成分とする天体のこと。
超弦理論:
宇宙の最小基本要素をプランク長さ(10-35m)程度に広がった弦(ひも)だと考える理論。
超新星爆発:
星の一生の終わり方は、その大きさによって異なる。太陽より重い星の場合は、大きくふくらみ最後に大爆発をおこす。これを超新星爆発という。
超流動:
液体ヘリウムを極低温におくと自然に容器の壁をのぼっていく現象として知られている。
強い力:
素粒子は大きく2種類に分かれる。物質を形づくる物質粒子と、その間で力を伝えるゲージ粒子である。グルーオンはゲージ粒の一種である。また、世界には「4つの力」が存在しており、「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」と呼ばれている。その中で、クォーク同士を結び付け、陽子や中性子を形づくると同時に、原子核の中で陽子や中性子を結び付けている力が「強い力」である。
は行
ハドロン:
強い相互作用をする粒子の総称。バリオンやメソン(中間子)はハドロンの一種。
ま行
魔法数:
原子核が特に安定となる陽子および中性子の個数。現在、安定核付近で認められている魔法数は 2, 8, 20, 28, 50, 82, 126などであり、ヘリウム4(4He)、酸素16(16O)のような二重魔法数となる原子核は特に安定となる。
マヨナラ粒子:
素粒子は、電荷の正負のほか、スピンが半整数(1/2)か整数(0)かによって性質が大きく異なる。スピン半整数をフェルミ粒子、スピン整数をボース粒子と呼び、フェルミ粒子のうち電荷をもつものをディラック粒子、電荷をもたないものをマヨナラ粒子と呼ぶ。マヨラナ粒子はいまだに発見されておらず、電荷を持たないニュートリノはマヨナラ粒子の有力候補とされる。