宇宙を⾶び交うニュートリノの動きを明らかに
〜世界初の 6 次元シミュレーションに成功〜
国⽴⼤学法⼈筑波⼤学
国⽴⼤学法⼈京都⼤学
国⽴⼤学法⼈東京⼤学
2020年12月1日
物質を構成する基本的な素粒⼦の⼀つであるニュートリノは我々の宇宙に⼤量に存在し、わずかながら質量を持つことが知られています。しかし、その質量は、地上の素粒⼦実験などでは測定が困難で、未解明の謎として残っています。⼀⽅、宇宙における天体や物質の分布(⼤規模構造)の詳細な観測からニュートリノの質量を測定できることが近年の宇宙進化の理論によって⽰され、⼤型観測プロジェクトが世界中で計画されています。
理論的には、精緻な数値シミュレーションにより宇宙の⼤規模構造を詳細に再現することが必要ですが、そのためには、多次元空間中での素粒⼦の集団的な運動を記述する「ブラソフ⽅程式」を解かなくてはなりません。この難解な⽅程式を解くためには膨⼤な計算時間やコンピュータの記憶容量が必要なため、これまではニュートリノの分布を仮想的な粒⼦の分布に置き換え、近似的な解を得ることしかできませんでした。しかしこの⽅法では、再現された宇宙の物質分布に⼈⼯的な数値ノイズが
混⼊するという⼤きな問題があります。
本研究では、筑波⼤学と東京⼤学が新たに開発したブラソフ⽅程式の⾼精度計算⼿法と、国内を代表するスーパーコンピュータを組み合わせることによって、ブラソフ⽅程式を直接解き、宇宙を⾼速で⾶び交うニュートリノの6次元数値シミュレーションを⾏うことに、世界で初めて成功しました。これにより、ニュートリノの集団的な運動の様⼦を正確に調べることができるようになり、ニュートリノの質量を正確に測定するための理論モデルの構築が可能となりました。
本研究は計算基礎科学連携拠点(JICFuS)の元、⽂部科学省 ポスト「京」重点課題 9「宇宙の基本法則と進化の解明」、⽂部科学省スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム(宇宙の構造形成と進化から惑星表層環境変動までの統⼀的描像の構築)、科学研究費補助⾦(JP18H04336)の⽀援により実施されました。
くわしくは筑波大学のプレスリリースをご覧ください。
https://www.ccs.tsukuba.ac.jp/release201201/
発表者
- 吉川 耕司
- (筑波⼤学 計算科学研究センター 講師)
- ⽥中 賢
- (京都⼤学 基礎物理学研究所 特定研究員)
- 吉⽥ 直紀
- (東京⼤学 カブリ数物連携宇宙研究機構 主任研究者/教授)
- 斎藤 俊
- (ミズーリ州⽴ミズーリ⼯科⼤学 助教授)
掲載論文
- 論文誌名:
- 「The Astrophysical Journal 」
- 論文タイトル:
- Cosmological Vlasov-Poisson Simulations of Structure Formation with Relic Neutrinos: Nonlinear Clustering and the Neutrino Mass
(ニュートリノを含む構造形成の宇宙論的 Vlasov-Poisson シミュレーション:⾮線形クラスタリングとニュートリノ質量) - 著者:
- 吉川耕司(筑波⼤学計算科学研究センター)、⽥中賢(京都⼤学基礎物理学研究所)、吉⽥直紀(東京⼤学カブリ数物連携宇宙研究機構)、斎藤俊(ミズーリ州⽴ミズーリ⼯科⼤学)
- 掲載日:
- 2020 年 11 ⽉ 30 ⽇
- DOI:
- https://doi.org/10.3847/1538-4357/abbd46
問い合わせ先
【研究に関すること】
吉川 耕司(よしかわ こうじ)
筑波⼤学 計算科学研究センター 講師
URL: https://www2.ccs.tsukuba.ac.jp/Astro/Members/kohji/
【取材・報道に関すること】
筑波⼤学 計算科学研究センター 広報・戦略室
E-mail: pr[at]ccs.tsukuba.ac.jp ([at]を@に変えてください)
京都⼤学 総務部広報課 国際広報室
E-mail:comms[at]mail2.adm.kyoto-u.ac.jp ([at]を@に変えてください)
東京⼤学 国際⾼等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 広報担当 ⼩森 真⾥奈
E-mail:press[at]ipmu.jp ([at]を@に変えてください)