QCD相構造
QCD相構造
フレーバー数2+1(アップ、ダウンおよびストレンジクォークを含む)有限温度QCDの相構造を調べます。従来のシミュレーション研究は、いずれも自然界とは対称性の異なる格子定式化を用いて行われ、その結果自然界のクォーク質量では物理量に飛びのないクロスオーバーであるという結論が定着しています。一方で、理論的により確からしい予想が可能なフレーバー数2および3の極限では、シミュレーションによる確定的な結論は得られていません。実際、ポスト京重点課題9における研究では、2フレーバーの理論には有限のクォーク質量で従来知られていなかった大きな物理量の飛びが観測されました。これは、QCDの量子異常に関係するU(1)対称性の回復に付随するものと考えられ、この研究で初めて明らかになったものです。本課題では、より現実に近いフレーバー数2+1での相構造を調べるため、カイラル対称性を保つ格子定式化を用いたシミュレーションを複数の温度で実行し、上記の(疑似)相転移の存在・非存在を確認します。