B中間子崩壊
B中間子崩壊
B中間子崩壊は、素粒子標準模型のほころびをさぐる素粒子実験の中心的な対象であり、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のSuperKEKB/Belle II実験はその代表的な実験施設です。本課題では、格子QCDの数値シミュレーションにより、小林・益川行列要素の決定に関わる B→πℓνセミレプトニック崩壊の形状因子を高精度(|Vub|の決定精度として5%以下)で計算します。従来の解析で用いられているベクトル型形状因子に加えて、タウ粒子を含む崩壊モードを記述するスカラー型形状因子、標準模型を超える理論で想定されるテンソル型形状因子も計算します。重点課題9を通じて生成した格子データとカイラル対称性を保つ定式化を採用してシミュレーションの不定性を制御し、形状因子の高精度計算を実現します。
この研究の発展として、B中間子のインクルーシブ崩壊やB→K(*)ℓℓ崩壊のハドロン行列要素の計算に取り組みます。前者は格子上での取り扱いが難しい励起状態への崩壊を含み、後者はチャーモニウム共鳴による長距離QCD効果が十分に理解されていません。格子QCDによる計算手法が確立されていないこれらの崩壊モードに関する手法開発を進めます。