核構造とr過程
核構造とr過程
ポスト京重点課題9を通じて開発してきたモンテカルロ殻模型計算の手法を用い、QCDから導かれた高精度の有効核力にもとづいて、元素合成のr過程に関わる核種の大規模量子多体計算を実行します。r過程を理解するのに必要な核データを求めると同時に、これらの核構造を支配するメカニズムを探求します。r過程で重要になる核種であるニッケル78から中重核に対象を広げ、r過程解明の鍵となるニュートリノと原子核の反応率や崩壊率などを計算し、原子核形状とその変化がベータ崩壊遷移強度に与える影響を調べます。対象となる核種は数多くあるが、理化学研究所RIビームファクトリなどで実験対象となる中性子過剰核種に重点を置きます。
これらの研究に付随して、原子核をプローブとして標準模型を超える新物理を探索する実験に必要な核構造の計算も計画しています。すなわち、ニュートリノレス二重ベータ崩壊の探索に使われるゲルマニウム76や、永久電気双極子能率の実験的探索の対象となるキセノン129、水銀199の原子核構造の理論計算です。これらは、[B中間子崩壊]の研究と同様に、標準模型を超える法則の実験的探索に理論計算の立場から貢献しようとするものです。