研究開発課題責任者
研究開発課題責任者
研究開発課題責任者あいさつ
文部科学省スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラムは、2021年度からの共用開始を目指した「富岳」を用いた成果を早期に創出することを目的としたもので、19課題が選定され、本課題「宇宙の構造形成と進化から惑星表層環境変動までの統一的描像の構築」は、①人類の普遍的課題への挑戦と未来開拓の領域において採択されています。
天文学・惑星科学においては、実際の実験が困難であるために計算機シミュレーションは1960年代から重要な役割を果たしてきていますが、近年までは銀河形成、星団形成・進化、星形成、惑星形成、惑星気候といった単一の階層のシミュレーションでも、現実的な計算量で結果を得るために様々な近似・単純化が行われてきています。例えば銀河形成では、最新のシミュレーションでも「星」粒子は数百倍の質量を持つ超粒子です。もちろん、そのようなモデルでも有用な知見は得られますが、位置天文衛星Gaiaによって銀河内の非常に多くの星の位置・運動が明らかになると、その理解のためには星の質量の分布までを考慮したモデル化が重要になります。また、星形成を抑制する効果をもつ超新星爆発や大質量星からの放射も、個々の星を分解することで初めて適切なモデル化が可能になります。
各階層においての、十分な分解能をもったシミュレーションは、大規模で高速なスーパーコンピューターと、それを有効に活用できる、必要な物理過程を取り入れた上で高い並列度で高効率を実現できるシミュレーションソフトウェアの組合せにより初めて可能になります。計算能力は「富岳」が実現し、ソフトウェアは重点課題9および萌芽的課題3で開発してきたものを使っていきます。
本課題では、各階層において観測と直接比較できる、十分な分解能を持ちと適切に物理過程を取り入れたモデルを構築し、観測と比較しつつ階層間をつないだ理解につなげます。具体的には、
- サブ課題A「大規模数値計算と大型観測データのシナジーによる宇宙の進化史の解明」
- サブ課題B「星形成と惑星形成をつなぐ統一的描像の構築」
- サブ課題C「ブラックホールと超新星爆発における高エネルギー天体現象の解明」
- サブ課題D「太陽活動と惑星環境変動の解明」
の4つのサブ課題を設定しています。