目標・概要
目標・概要
本課題の目的は、宇宙の始まりであるビッグバンから、膨張宇宙における重力不安定による構造形成(ダークマターハローの形成)、それに伴って起こる銀河形成、銀河の中での星形成、星形成に伴う惑星形成、形成後の惑星の進化、表層環境の形成、さらには太陽活動とその太陽圏、地球への影響といった、宇宙における階層的な構造の形成と進化についての全体的・統一的な理解を、複数の階層にまたがったシミュレーションと最新の観測成果を組み合わせることで構築していくことです。
本課題では、各階層において観測と直接比較できる、十分な分解能を持ちと適切に物理過程を取り入れたモデルを構築し、観測と比較しつつ階層間をつないだ理解につなげます。
具体的には、
- サブ課題A「大規模数値計算と大型観測データのシナジーによる宇宙の進化史の解明」
- サブ課題B「星形成と惑星形成をつなぐ統一的描像の構築」
- サブ課題C「ブラックホールと超新星爆発における高エネルギー天体現象の解明」
- サブ課題D「太陽活動と惑星環境変動の解明」
の4つのサブ課題を設定しています。各サブ課題において、次の表にまとめるように現在の世界の水準を大きく超えるシミュレーションを行い、各領域の研究を飛躍的に進めるだけでなく、例えば銀河形成と星団形成、星団形成と星形成といった階層間の相互作用の理解を可能にします。
表 本研究課題の独自性と世界に対する優位性
サブ課題A:大規模数値計算と大型観測データのシナジーによる宇宙の進化史の解明 | |
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ダークマターの密度揺らぎからはじまる宇宙の天体形成 | 初代星からはじまる宇宙全スケールの階層的構造形成史を再現し、大規模天体模擬カタログを生成・公開する |
ニュートリノの大規模構造形成に対する力学的影響 | 無衝突ボルツマン方程式の直接積分を用いて宇宙論的ニュートリノを考慮した宇宙大規模構造形成シミュレーション |
恒星スケールを分解した銀河形成 シミュレーション | 従来の1000倍の粒子数による個々の星を分解した銀河シミュレーションから探る天の川銀河形成 |
高密度星団におけるコンパクト連星の形成 | 星1つ1つを再現した、重力多体計算による球状星団シミュレーション |
サブ課題B:星形成と惑星形成をつなぐ統一的描像の構築 | |
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銀河系内での分子雲と分子雲コアの 形成 | 一桁以上高い空間解像度でマルチスケールの物理現象を 一貫して再現した銀河円盤内の分子雲コア形成シミュレーション |
原始惑星系円盤の固体微粒子を考慮 した大域的磁気流体シミュレーション | ダスト粒子と非理想磁気流体効果の双方を整合的に考慮した原始惑星系円盤の大局的な高解像度非理想磁気流体シミュレーション |
原始惑星系円盤中での微惑星の集積と惑星形成 | 1000倍の粒子数という圧倒的な分解能をもつ 惑星集積計算による太陽系形成過程の再現 |
原始惑星系円盤の乱流中でのダスト 成長 | 天文分野でナビエ・ストークス方程式を解く乱流の 大規模数値計算による微惑星初期成長の理解の革新 |
サブ課題C:ブラックホールと超新星爆発における高エネルギー天体現象の解明 | |
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ブラックホール・降着円盤・相対論 ジェット | 100倍以上の分解能を有するブラックホール降着円盤の相対論的輻射磁気流体力学シミュレーション |
重力崩壊型超新星爆発の第一原理計算 | 第一原理的な3次元空間ニュートリノ輻射流体計算による重力崩壊型超新星爆発のシミュレーション |
サブ課題D:太陽活動と惑星環境変動の解明 | |
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太陽活動周期計算・太陽表面黒点形成 計算 | 64倍に達する世界最高分解能の太陽対流層全体を包括した太陽活動の第一原理シミュレーション |
岩石惑星内部 | マグマとマントルのダイナミクスを正確に取り入れた プレートテクトニクスを伴うマントル対流の3次元シミュレーション |
岩石惑星表層大気 | 30倍の空間解像度で、探査機で観測されている雲構造を完全に再現した惑星大気全球シミュレーション |
ガス惑星大気 | 全球計算に基づいた高解像度長時間積分によるガス 惑星大気の対流数値シミュレーション |
実施期間:2020(令和2)4月から2023(令和5)年3月
代表機関:国立大学法人神戸大学
研究開発課題責任者:牧野淳一郞(神戸大学理学研究科教授)