#contents *固有値問題解法の事例 [#c14d0f2c] **複素回転法による原子核多体共鳴状態の解析 [#w5a7cc73] 提供: 理化学研究所仁科加速器研究センター 船木靖郎 (JICFuS), 2013年6月17日 共鳴状態を量子力学的に議論する際、共鳴の境界条件を付ける必要があるが、3体系以上の 多体共鳴に対して、正しい共鳴の境界条件は自明でない。そのような多体共鳴に対しても 適用可能な強力な方法に、複素回転法(Complex Scaling Method)がある。 この方法のメリットは、単に #br CENTER:&math(r \rightarrow r \exp(i\theta)); (複素回転) #br の変換を施すことで、正エネルギーの領域に対しても束縛状態同様の扱いで、共鳴パラメータ を決定できる点にある[1,2]。現在では、複素回転法は単に 共鳴パラメータを決定するだけでなく、核反応を含め共鳴状態の関与する様々な物理現象に 適用されその応用範囲を広げている[3]。 複素回転法では、複素回転されたハミルトニアン行列、Hに対し、次の一般化固有値問題を解くことが必要となる。 #br CENTER:&math(Hx=ENx); #br ここでHは複素対称(tH=H)、ノルム行列Nは実対称行列(tN=N) 上記一般化固有値問題は、 #br CENTER:&math(Hx=ENx \leftrightarrow N^{-1/2}HN^{-1/2} (N^{1/2}x)=E(N^{1/2}x)); #br の形に変形でき、 #br CENTER:&math(H'x'=Ex' (H'=N^{-1/2}HN^{-1/2}, x'=N^{1/2}x)); #br の標準固有値問題の形に帰着できる。この場合、まずNを対角化したうえで行列 H' を作り、 それを対角化するという手順を踏む。 既存のライブラリには、複素対称(密)行列に特化したサブルーチンは含まれていない ことが普通であり、まして数万次元程度の大規模並列計算用のものは皆無である。 今回、複素対称(密)行列に対する標準固有値問題を解き、全ての固有値、 固有ベクトルを求める並列計算用サブルーチンを開発した(PZDIAG)。 -[[数値計算の道具箱:固有値問題の解法>InterWikiName:固有値問題の解法#r00d8d05]] -[[数値計算の道具箱:固有値問題の解法>数値計算の道具箱#pzdiag]] -[[MPI 対応の複素対称行列対角化プログラム (JICFuS プロダクツ):http://www.jicfus.jp/field5/jp/promotion/jicfusproducts/#PZDIAG]]~ 参考文献~ [1] J. Aguilar and J. M. Combes, Commun. Math. Phys. 22, 269 (1971).~ [2] E. Balslev and J. M. Combes, Commun. Math. Phys. 22, 280 (1971).~ [3] H. Horiuchi, K. Ikeda and K. Kato, Prog. Theor. Phys. Suppl. No. 192, (Sec.7) (2012), and references therein.