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(4)ダークマターの密度ゆらぎから生まれる第1世代天体形成

京速コンピュータ「京」で初めて可能になる大規模シミュレーションによって、
・ダークマターの重力ゆらぎによる構造形成
・バリオンの構造形成、具体的には第一世代星形成および銀河形成
を、従来の研究よりも 2 桁程度高い質量分解能で行い、宇宙における天体の起源を明らかにします。

現在の標準的な宇宙モデルでは、銀河などの天体は、宇宙初期にあったダークマターの密度ゆらぎが重力不安定により成長してできたものと考えられています。この成長過程は強く非線型なものであるため、計算機シミュレーションが研究のための主要なツールとなります。さらに、ゆらぎのパワースペクトルが、カットオフ波長とされる地球質量程度から、太陽質量の100万倍程度の12桁にわたってフラット(重力ゆらぎが非線型になる時刻が同じ)であり、その上ではゆっくりとゆらぎが小さくなるという性質をもちます。そのため、原理的には銀河スケールの構造の理解には18桁程度の質量分解能が必要になり、「京」をもってしてもその能力を大きく超えます。従って、
・ダークマターの構造形成についてのカットオフスケールを考慮したモデル化手法の構築
・このモデル化を取り入れた星形成、銀河形成シミュレーション
を行います。

このためには、ダークマターシミュレーションで従来の最大規模の計算に比べて2桁、銀河形成では3桁程度高い質量分解能が必要になります。まず、「京」でその分解能の計算を行うための高効率な並列化コードを開発します。現状では、ダークマターのみのシミュレーションコードで10コアを超える程度までの並列化ができているため、最初のプロダクションランとして進めます。並行して、第一世代星形成・銀河形成シミュレーションコードの高並列化、高効率化を進めます。

宇宙初期における星形成・銀河形成過程の解明は、観測・理論の両面において現代の宇宙物理学の主要な課題です。観測では、宇宙誕生からわずか数億年後に生まれた銀河があることがわかってきています。それらの形成過程を理解することは、理論・シミュレーション研究の大きな課題です。また、これら第一世代天体の振る舞いを理解することは、現在にいたる天体形成、宇宙における元素合成の基礎を理解することにつながります。

本研究課題の学術的・社会的意義は2つあります。1つは、我々が存在している宇宙はどのようにして生まれ、どのようにして現在の姿をとったのかという、科学にとって究極の問いの解明に近づくことです。もう1つは計算基礎科学として、大自由度であり、空間スケール・時間スケールの幅が極めて大きな現象のためのシミュレーション手法を開発・提供することです。

また戦略分野5内においては、素粒子物理、原子核物理、超新星によるエネルギー供給や元素合成といった研究開発課題1~3の研究成果を物理過程として取り入れて、観測と比較できるような予言を行います。

構成メンバー

研究開発課題責任者
牧野淳一郎 Junichiro Makino 理化学研究所計算科学研究機構 粒子系シミュレータ研究チーム チームリーダー/エクサスケールコンピューティング開発プロジェクトコデザイン推進チーム チームリーダー

メンバー
梅村雅之 Umemura Masayuki 筑波大学計算科学研究センター センター長/教授
行方大輔 Daisuke Namekata 筑波大学計算科学研究センター 研究員(神戸分室)
野村真理子 Mariko Nomura 筑波大学計算科学研究センター 研究員
松元亮治 Ryoji Matsumoto 千葉大学大学院理学研究科 教授
石山智明 Tomoaki Ishiyama 千葉大学統合情報センター 准教授
横山央明 Takaaki Yokoyama 東京大学大学院理学系研究科 准教授
岡本 崇 Takashi Okamoto 北海道大学大学院理学院 助教
長谷川賢二 Kenji Hasegawa 名古屋大学大学院理学研究科 宇宙論研究室 助教
高橋博之 Hiroyuki Takahashi 国立天文台 特任助教
斎藤貴之 Takayuki Saito 東京工業大学地球生命研究所 特任准教授
小南淳子 Junko Kominami 東京工業大学地球生命研究所 産学官連携研究員
堀田英之 Hideyuki Hotta High Altitude Observatory(HAO) 海外特別研究員

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