ニュートリノ質量決定に不可欠なデータをスーパーコンピュータ「京」で計算
東京大学
日本原子力研究開発機構
2016年3月17日
発表のポイント
未知の量であるニュートリノの質量は実験で直接測られるのではなく、ゼロニュートリノ二重ベータ崩壊の半減期の測定データから求める。その際に必要になる核行列要素を、最高精度で計算した。
スーパーコンピュータ「京」等を用いての大規模な数値シミュレーションにより、20億次元の行列の対角化を行った。その結果、これまで適切に取扱うことができなかったプロセスを精度よく扱い、信頼性の大幅な向上につながった。
ニュートリノの質量測定を目的として世界中で先端大型実験装置が建設されている。本研究結果により、先端大型実験装置での実験意義を高めることが期待される。
発表概要
東京大学大学院理学系研究科の大塚孝治教授、清水則孝特任准教授、岩田順敬特任助教、及び、日本原子力研究開発機構の宇都野穣研究主幹、日本学術振興会のJ. Menéndez外国人特別研究員らは、文部科学省HPCI戦略プログラム分野5のもとでスーパーコンピュータ「京」等を用いた、原子核の陽子—中性子多体構造に関する大規模数値シミュレーションを進めており、本研究はその成果の一つである。
核行列要素はこれまでいくつかの違った方法で計算されてきた。今回の研究対象であるカルシウム48原子核に限っても、今回の値に比べて3倍弱から約半分の範囲に散らばっている。本研究グループは、今回、スパコンによる大規模な量子多体シミュレーションにより、20億次元の行列の対角化を行った。その結果、これまで精確に扱われていなかった効果が扱われるようになり、計算の信頼度を大幅に向上させることに成功した。このような大規模計算はこれまでに例がなく、 「京」のようなスパコンの重要性を示すものでもある。
核行列要素の値が大きかったとすると、二重ベータ崩壊は早く起こる事になるので測定の待ち時間は短くなる。言葉を変えれば、同じ条件のもとではイベントがより頻繁に起こるので、実験を短期間で済ませることが出来る。
本研究は,文科省HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」および計算基礎科学連携拠点(JICFuS)のもとで、理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」などを利用して得られたものである(課題番号:hp150224)。
詳しくは東京大学 大学院理学系研究科・理学部のプレスリリースをご覧ください。
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/4610/